国際的な子の奪取の民事面に関する条約(仮称)

(Convention on the Civil Aspects of International Child Abduction)

2010年3月

1.子の奪取条約の概要

本条約は、子に対する監護権の侵害を伴う国境を越えた移動について、そのような移動自体が子の利益に反する、監護権の所在を決着させるための本案手続は移動前の常居所地国で行われるべきであるとの考えに基づき、子を常居所地国に戻すための国際協力の仕組み等を定めるものである。

監護権者が、奪取元又は奪取先の国の中央当局に子の返還の申立てをした場合、奪取先の国の中央当局は、迅速に子の所在を発見し、裁判所等の手続を経て返還命令を受けた上で、子を奪取元の国へ返還するといった行政協力義務を負うことになる。

本条約に基づく手続においては、奪取元の国に子を返還することが原則であるが、子を危難にさらすことになる等の事由がある場合には返還することを要しないとされる。

2.作成経過及び各国の締結状況(別紙:締約国一覧)

本条約は、1980年10月25日にヘーグ国際私法会議において採択され、1983年に発効した。

本年3月現在、締約国は82か国(米国、カナダ、オーストラリア、すべてのEU加盟国等)に達し、G8諸国中、未締結であるのは日本とロシアのみである(別紙)。

3.本条約締結の検討状況

本条約の締結に当たっては、中央当局の指定、我が国の家族関係の法制度との整合性等をはじめ検討すべき課題は少なくない。一方、①日本人の国際結婚とその破綻の増加に伴い、日本人の子が外国へ連れ去られる問題に的確に対応するための仕組み作りの必要性が高まりつつあること、②それまでの生活の場から国境を越えて連れ去られることにより生じる有害な効果から子を保護するという本条約の目的は理解できるものであること、③本条約は子の親権問題を解決するための前提ルールとして国際的な標準となっており、我が国が本条約の枠組みに参加することが国際社会において求められていることなども考慮し、関係省庁と連絡を緊密に取りつつ、本条約の締結の可能性について検討を行っている。

(別紙)
(参考)

国際的な子の奪取の民事面に関する条約 締約国一覧

(2010年3月現在)

アジア

※(中国)
スリランカ
タイ

北米

カナダ
米国

中南米

アルゼンチン
バハマ
ベリーズ
ブラジル
チリ
コロンビア
コスタリカ
ドミニカ共和国
エクアドル
エルサルバドル
グアテマラ
ホンジュラス
メキシコ
ニカラグア
パナマ
パラグアイ
ペルー
セントクリストファー・ネービス
トリニダード・トバゴ
ウルグアイ
ベネズエラ

欧州

アルバニア
アルメニア
オーストリア
ベラルーシ
ベルギー
ボスニア・ヘルツェゴビナ
ブルガリア
クロアチア
キプロス
チェコ
デンマーク
エストニア
フィンランド
フランス
グルジア
ドイツ
ギリシャ
ハンガリー
アイスランド
アイルランド
イタリア
ラトビア
リトアニア
ルクセンブルグ
マルタ
モルドバ
モナコ
モンテネグロ
オランダ
ノルウェー
ポーランド
ポルトガル
ルーマニア

サンマリノ
セルビア
スロバキア
スロベニア
スペイン
スウェーデン
スイス
マケドニア
トルクメニスタン
ウクライナ
英国
ウズベキスタン

大洋州

オーストラリア
フィジー
ニュージーランド

中東

イスラエル
トルコ

アフリカ

ブルキナファソ
モーリシャス
セイシェル
南アフリカ
ジンバブエ
モロッコ
※香港、マカオのみ

計 82か国
(アルファベット順)