岩田公邸料理人のスウェーデン奮闘記
平成28年2月25日(木)
IKEAやH&Mで日本でも有名なスウェーデンの首都ストックホルムは,北海道(北緯40~45度)よりも北方(北緯59度20分)に位置します。スウェーデン人はフィーカと呼ばれる甘いお菓子などを食べながらコーヒーや紅茶を楽しむ時間を大切にし,食文化としては,乳製品,肉,魚を中心に,付け合せにはベリー類やじゃがいも取り入れた料理があります。この日本から遠く離れた北欧の地に2015年10月末に着任し,日本とは全く違う土地や食材を前に,現地の味を取り入れながら新しいことに日々挑戦する岩田大(いわたまさる)公邸料理人のスウェーデン奮闘記をご紹介します。
![]() 岩田料理人と地元シェフのフリーダ・ロンジェ氏 Photo: Masaru Iwata |
![]() 岩田料理人の調理風景 Photo: Baraka Yamato |
2015年9月,在スウェーデン日本国大使館の公邸料理人として働く事が決まりました。想像できない仕事内容に期待は膨らみつつも,不安もありました。しかし,自分の実力を試したいと思いました。日本国大使館の会食と言えば『和食』です。自分の専門はイタリアンのため,専門とは異なる『和食』について学ぶため 日本料理店で短期研修をさせていただきました。そこで『和食』の心である味付けや出汁・食材の扱いを学びました。
2015年10月末,紅葉で,町全体が黄色に染まったスウェーデンに赴任しました。スウェーデンに到着して気づいたのは,日本食ブームから寿司屋等はたくさんあります,しかし日本人が納得できるような『和食』が浸透しているとはなかなか言えない現状です。そんな中,『和食』を体験するのが初めての方でも抵抗なくお食事を楽しんでいただけるように,スウェーデンの方々にとって馴染みのある食材をできるだけ使って,『和食』を表現したいと思うようになりました。トナカイやイノシシ,ヘラジカのなどの肉や,保存食である強い燻製の魚介類などを和の調味料や出汁を使って味付けする事もあります。またスウェーデンの方々に受け入れていただける形で提供する事が大切だと考え,食べやすい器選びや提供するタイミングには気を遣っています。
時間がある時はスウェーデンの伝統料理を出すレストランや,最先端のスウェーデン料理店を食べ歩き,スウェーデン人の求める味付けを学んだり,日本では手に入りづらい地元の食材について日々勉強中です。公邸や大使館に勤める現地スタッフからも,それぞれの出身地方での伝統料理や風習について教わるのも,日々新しい発見があり,最近の楽しみの一つです。
スウェーデンは冬の季節が長く,12月~1月では朝8時に出た太陽が午後3時には沈むほど日照時間が短い為,葉物野菜が手に入りづらいです。また生食できるような新鮮な魚介類が少なく,ほとんど生食ができません。仕入れルートなど,これからも情報収集を強化してきたい考えています。冬の間,野菜や果物をほとんど輸入に頼っているこの国では,春夏秋冬あらゆる季節のものが同時に市場に並んでいる事も珍しくなく,季節感という考え方自体が日本に比べると希薄なように感じます。そんなスウェーデンに,『和食』の要素の一つとして日本の四季を紹介するため,器や飾りの葉や花を使うことで,輸入野菜でも季節感を出すよう心がけています。
ここスウェーデンで,より多くの方に日本の料理や文化に興味を持っていただける様,これからも知識を増やし 創意工夫を懲らした料理を提供していきたいと思っています。
2016年2月25日 在スウェーデン日本国大使館公邸料理人 岩田大
![]() サーモンの飯蒸し Photo: Baraka Yamato |
![]() 大根含ませ煮 Photo: Baraka Yamato |
![]() 鰻の燻製の酢の物 Photo: Baraka Yamato |
![]() サーモンの柚香焼き Photo: Baraka Yamato |